旅行業者になるには

はじめに
観光庁によると、旅行業者とは「報酬を得て一定の行為(注1)を行う事業を営もうとする者」と定義されています。
(注1):旅行業法第2条第1項第1号から第9号に掲げる行為
「一定の行為」を詳細に説明すると長いのですが、主に以下の三つの業務に分けられます。
- 募集型企画旅行(パッケージツアーなど)
- 受注型企画旅行(社員旅行など)
- 手配旅行(航空券、宿泊施設の予約のみ)
そして、取り扱う地域の範囲によって、第一種旅行業者、第二種旅行業者、第三種旅行業者、地域限定旅行業者の4つに分類されます。
(旅行業者の分類に関しては、観光庁のサイトをご覧ください)
第一種・第二種は国内・海外の違いなので分かりやすいですが、第三種・地域限定から出てくる「拠点区域」という概念について少し説明します。
(ア)自らの営業所のある市区町村
(イ)(ア)の市町村に隣接する市町村の区域
(ウ)観光庁長官の定める区域
これら(ア)~(ウ)を「拠点区域」と呼び、一の旅行ごとに、出発地・目的地・宿泊地及び帰着地が拠点区域に収まっている必要があります。要するに自社の営業所の近隣の狭い範囲での旅行、ということになります。
旅行業者登録に必要な条件
どんな許認可でもそうですが、主に要件として必要になるのは「場所」、「人材」、「資金」の3つです。旅行業は資金の条件まで求められるので、ややハードルの高い許認可と言えます。イメージとしては宅建業に近いので、宅建業をご存じの方は思い浮かべながら読んでみてください。
営業所
登録は、主たる営業所のある都道府県宛に申請します(登記上の本店ではなく、実際に営業を行うところ)。賃貸物件での営業を考えている場合は、賃貸借契約書に「旅行業の営業所として使用する」旨の記載が必要となります。
人材
一営業所につき一人以上の「旅行業務取扱管理者」の選任が必要です。これは国家資格ですが、旅行業者と同じく、取り扱える地域によって総合旅行業務取扱管理者、国内旅行業務取扱管理者、地域限定旅行業務取扱管理者の三種類があります。自社の申請内容に合致した資格者が必要です。管理者は常勤している必要があり、従業員が10人以上いる場合は、複数人の管理者が必要です。
資金
旅行業者になるには、基準資産額(※)以上の財産的基礎が求められます。単に資本金や現金があれば良いというものではないので、決算書をよく確認する必要があります。
※基準資産額=資産―創業費その他繰延資産―営業権―負債―不良債権―営業保証金または弁済業務保証金分担金
各業者ごとの必要基準資産額は下記の通りです。
- 第一種旅行業者 3,000万円
- 第二種旅行業者 700万円
- 第三種旅行業者 300万円
- 地域限定旅行業者 100万円
さらに弁済業務保証金分担金(いわゆる供託金)も必要となります。これは、旅行協会の会員か否かで金額が変わります。旅行協会の会員になった場合の金額は、次の通りです。
- 第一種旅行業者 1,400万円
- 第二種旅行業者 220万円
- 第三種旅行業者 60万円
- 地域限定旅行業者 3万円
なお、旅行協会への入会時には、入会金40万円程度と、毎年の年会費が必要です。
登録後の業務
登録後は、毎事業年度終了後100日以内に、その事業年度における旅行業務における旅行者の取引の額を報告する必要があります。
また、有効期間が5年間となっているので、期間満了の二か月前までに、更新登録の申請が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。旅行業の申請は、海外旅行まで扱える第一種となると、財産的要件がかなり厳しくなります。自分の取り扱える範囲をよく確認して申請することが必要です。
(文責:川上)